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買取ではなく、託すという選択

昨日は、着物のお引き取り依頼をいただいたお客様のお宅へ伺ってきました。

先月頃から増えてきた「着物を引き取ってほしい」というご相談。

これまでも「誰か着てくれる方に譲りたい」「捨てるには忍びない」というお話はありましたが、保管場所や管理の問題もあり、十分に対応することができませんでした。

けれど、お断りするたびに思っていたのです。

私が引き受けなかった着物たちは、その後どうなるのだろう…。

ゴミとして処分されてしまうのだろうか。

そう考えると胸が痛くなりました。

そんな想いもあり、このたび着物の引き取りや委託販売を本格的にスタートすることにしました。

 

一件目のお宅では、着物や羽織、帯が部屋いっぱいに並べられていました。

お母様が遺されたお着物たちです。

和裁をされていたというお母様のお話を伺いながら、一枚一枚見せていただきました。

「それは母がよく着ていました」

「これは父のものなんです」

「この羽裏が素敵でしょう?」

そう話される姿から、お着物に込められた思い出が伝わってきます。

ご自身でリメイクしようと思ったこともあったそうですが、なかなかハサミを入れる決心がつかず、そのまま年月だけが過ぎていったとのこと。

今回、思い切ってご連絡くださいました。

お話を伺いながら、

「まだ手放す準備ができていないものは残しておきましょう」

「一度に整理しなくても大丈夫ですよ」

とお伝えしました。

整理することは、急ぐことではありません。

気持ちの整理と一緒に、少しずつ進めていけばいいのです。

大きな風呂敷四つ分のお着物を車へ積み込んだ時、お客様がぽつりとおっしゃいました。

「あぁ、スッキリしました」

その言葉がとても印象的でした。

 

二件目のお宅では、お母様が娘であるご自身のために仕立ててくださったお着物をお預かりしました。

どれも着用は一、二度ほどだったそうです。

それでも、そこにはたくさんの想いが込められています。

着物は不思議です。

たとえしつけ糸が付いたままの一枚であっても、その背景には母の愛情や娘の想いが宿っています。

お母様との思い出話を聞かせていただきながら、その重みを改めて感じました。

 

どちらのお客様も、今はお一人で暮らしていらっしゃる方でした。

着物の買取業者に依頼しても、値段が付かなかったり、二束三文だったりすることも少なくありません。

同じ「0円」でも、

「この人になら託したい」

そう思っていただけることが、何よりありがたいのです。

託された着物たちを次の方へつなぐ。

あるいは、新しい形へ生まれ変わらせる。

長い年月、大切にされてきた着物だからこそ、その先も大切にしていきたい。

「ありがとう」

「次の出会いを楽しみにしていてね」

そんな気持ちで、一枚一枚を受け取っています。

 

断捨離は、家の中を片付けるだけではありません。

心の中にも、そっと余白をつくってくれます。

お客様の「スッキリしました」の一言を聞くたびに、この活動を始めて良かったと思います。

託された想いごと受け取り、次へつないでいく。

それが今の私にできる役目なのかもしれません。